「ウッチャンナンチャン」の内村光良が、『ピーナッツ』以来7年ぶりのメガホンをとった監督作品。ピュアで残酷なお笑い界の舞台裏を、お笑いを知りつくした内村光良だからこその視点で描きだす。お笑いコンビ「房総スイマーズ」を演じるのは、ボケ担当・田中役に伊藤淳史、ツッコミ担当・甲本役に小出恵介。夢を追いかける姿、壁と向き合い、悩み、葛藤していく2人の熱演に注目。また、内村光良監督の書き下ろしネタでコントシーンにも初挑戦しているところも見所だ。そして2人の周りには、甲本の彼女の久美役に長澤まさみ、田中の彼女の麻衣子役に木村文乃、甲本と久美の間に生まれる娘、サクラ役に川口春奈らと、豪華ヒロインが集結した。
今回、キャンペーンで内村光良監督と小出恵介が来名!本作の撮影エピソードを語ってくれた。

お笑いの実情を知っているからこそ描けるんじゃないかって思いました(監督)
▷▷『ピーナッツ』に続く監督2作目ということで、挑戦したことは?
内村光良監督(以下:監督)「前回は仲間と撮った、みんなで作り上げたって意識が強かったので、今回はプロフェッショナルとしてやりたいと思ったんです。役者さんに演出をする、スタッフを束ねていくっていう感じで、監督しての入り口ぐらいには立ちたいなと。前は演者もやりましたし時間もなくて、後から考えるとお任せしてしまった部分も妥協してしまった部分もあった気がするんです。だから今回は監督として、限られた時間の中でできる最高のことをやろうと思っていました」
▷▷オファーを受けるのを迷ったそうですが、やっぱりやろうと思われた理由は?
監督「自分の世代の話だったら照れてできなかったけど、2つ後ぐらいの世代の青春物語だと割り切って、俯瞰的に描けるんじゃないかと思えたことですね。それに今お笑いをやっていて、一番実情を知っている人間だからこそ描けるんじゃないかって思えてきたんです」
▷▷お笑いコンビが交換日記をする設定が面白いですが、あり得ることなんでしょうか?
監督「僕らはなかったし、実際に聞いたこともありません。でも、もしかしたらどっかにいるかもしれない。(相方は)ずっと一緒で、ずっと横にいるワケだから、段々話さなくなっていくんですよ。だから(小出恵介演じる)甲本は危険を感じて、お互い面と向かって話すのは照れるから、交換日記をやろうと言い出すんですよね。このままじゃあダメだ、やっぱり話したいんだっていう想いはすごくわかります」
▷▷原作では漫才だったお笑いコンビを、コントの設定に変えたのは?
監督「漫才は難しくてできないんですよ。南原(清隆)と1回試したことがあるけど、僕はすっごいヘタなんです。でも自分がやってきたコントは書けますからね。映像として見せなくちゃいけないなら“コントでいかしてください”って(鈴木)おさむさん(原作者)に言いました」
▷▷映画の中でこだわった部分は?
監督「前説をした後に、“房総スイマーズ”の2人が地べたに座って弁当を食べているシーンなんかは、実際に僕が目撃したことなんです。横に椅子があるのにみんな遠慮して座らないんですよ。2人が売れない感じをちゃんと出すために、そういうこともあえて見せるってことですかね。それでお笑いを夢見て突っ走る者と途中で諦める者と、どちらにも共感してもらえるようには描いたつもりです」
▷▷映画から芸人さんへの愛を感じました。
監督「うちの事務所でも辞めていった人たちは何組もいますし、握手して“頑張ってな”って送り出してきたので、そういう想いも背負って描かなきゃなあと思っていましたからね」
▷▷自身の経験を反映した部分は?
監督「僕らの時代は前説の仕事はなかったんですけど、売れない頃に色々な営業先に行く序盤は、自分の駆け出しの頃を思い出して描きました。どしゃ降りの中でやったこともあるし、劇中に出てくるショーパブは、実際に僕と南原が出た場所なんですよ。ロケハンに行ってたまたま見つけて。ショッピングモールで営業をするのも、デパートの屋上を回っていた昔を思い出して、動きを足したりしました。子供ってネタ中に舞台を駆け回ったり、“つまんねーよ”ってヤジを入れるんですよ。子供は無垢だからこたえるんだよね(笑)」
▷▷リアリティがあるぶん、芸人の方には特別な感慨があるでしょうね。
監督「すごく染み込むみたいですね。前説のシーンがヤバイとか(笑)。お笑いをやっている人は観るポイントが違います。関西テレビの制作部長さんは元芸人さんだったそうで“本当に感動しました!”って言われました。どこが一番よかったか聞いたら、“房総スイマーズでした”と言って(舞台袖に)はけていったらADにグイッて引っ張られるところだそうで。自身もやられたそうで、あれは泣いちゃうって言ってました(笑)」

エキストラを“マジで笑わせてやる”って燃えていました(笑)(小出)
▷▷小出さんはもともとお笑いは好きでしたか?
小出恵介(以下:小出)「自分でやりたいと思ったことはないですけど、見るのは好きでしたね。自分の恥をさらしたり、自分を生け贄にして人に笑っていただくことはすごく素敵なことだと思いますから、お笑い芸人さんやお笑い自体をリスペクトしていました。だからなおさらこの作品はハードルが高かったんですよ」
▷▷甲本のキャラクターはどうやって作っていったんですか?
小出「原作を読んだ時にすごく面白いなと思って、スッと入っていけたんです。それで自然に甲本に感情移入してました。何でなのかはよくわからないですけど、甲本の人柄がすごく好きでした。自分とは違うけど、ある種の憧れや愛おしさを感じて。役に対する臨み方は毎回、違うんですけど、今回は最初の衝動が大きかったので、最後までその気持ちを大事に演じました」
監督「本当に原作が好きだったって言ってくれて、その想いでずーっと走ってくれた感じですね」
▷▷内村監督の印象は?
小出「本当に監督って感じでしたよ。演出も具体的に丁寧におっしゃってくれるので、非常にやりやすかったです」
▷▷お笑いの演出はハードルが高かった?
小出「僕らは未経験ですし、非常に厳しかったです(笑)」
監督「鬼になってたね(笑)。コント以外の芝居は達者ですから、お任せする部分がいっぱいありましたけど、コントに関してはお笑いのプロが見ても納得してもらえるレベルまで引き上げたいと思って、何十テイクとやらせちゃいました」
▷▷コントで人を笑わせるのは難しいですよね?
小出「難しいですよ。内村さんが書いてくださった台本がすごく面白いんですよ。で、こういう感じかなってイメージはできるんですけど、上手くできない。やってみると面白くならないんです。簡単なことじゃないんだとヒシヒシと感じましたね」
▷▷鬼の監督からはどんな支持が?
監督「アハハハ。僕は“てめぇコノヤロウ”とか言いませんよ(笑)」
小出「辛辣系ではないですね(笑)」
監督「優しい白鬼です(笑)。“よかった!よかったよ〜。じゃあもう1回やってみようか”って。言い方はソフトだけど“えっ!? またやんの?”みたいな(笑)」
小出「それ何回もありました。“さっき面白かったね”とか(笑)。厳しいですよ。絶対に妥協はしないですし。でもコントに関しては、やればやるほどよくなると感じましたし、とにかく頑張りました」
監督「やっぱり2人の呼吸が必要なんですよね」
▷▷コンビを組んだ伊藤(淳史)さんの印象は?
小出「伊藤くんとは同い年で、今回、初めて共演させていただいたんですけど、コントの練習もスッと入れましたし、序盤から一緒にいるのがすごく自然で楽でした」
▷▷コンビとして自主練習もしたりした?
小出「すごくやってました。お互いに頑張んなきゃと思っていたと思います。この作品に対してもコントに対しても。彼は堅実派で、よく練習したいタイプなんです」
監督「やろうっていうのはあっちなんだ?」
小出「大体そうです。僕はどっちかっていうとぶっつけ本番で何とかなるっていう発想があるんで(笑)。掛け合いも練習の時は二割ぐらいでやって、本番でグンとテンションが上がるんです。そうすると彼が“変わった?ちょっと困るんだけど”みたいな顔をしていて(笑)」
監督「クランクイン前に2人をお笑いライブハウスに飛び入りさせたんです。最初はやっぱりキャー!って歓声も大きかったんですけど、スベリましてね(笑)。あの時の2人の引きつった顔といったら(笑)。でもそこでスイッチが入ったのか、次からの練習はすごく貪欲になって、自主練もそれから始めたんでしょうね」
小出「あれは怖かったですね。実際の空気ってこういうことなのかって。それに欲が出てきて、演技とはいえ笑って欲しくなる。エキストラさんが入ると“マジで笑わせてやる”って勝手に燃えたり(笑)。到底できっこないことを思っていました(笑)」
▷▷劇中のコントは面白かったですよ。タクシーのネタなんて特に。
監督「タクシーは好評なんですよ。ライブハウスでも唯一あれだけはウケて(笑)。あれでドンと(笑いが)きたんでホッとしてました。2人はあの時にウケる快感とスベる怖さの両方を知ったんだと思います」

昨日まで夫婦役だったのに、この映画ではストーカー呼ばわり(笑)(監督)
▷▷女性キャストもよかったですが、キャスティングした理由は?
監督「(長澤)まさみちゃんは、ダメ元で聞いたらオッケーだったんでガッツポーズでした(笑)。(恋人役の)小出くんとは初共演だったんですけど、息の合ったいいシーンが撮れたなあと思います。木村文乃ちゃんは桑田(佳祐)さんとのCMを見ていいなあ〜と思って。麻衣子っぽいし、TSUTAYAの制服を着せたら可愛いだろうなあってコスプレマニアの血が騒いで(笑)」
小出「わかります!似合ってましたよね」
監督「似合ってたよね。あの撮影の当時、文乃ちゃんと小出くんはNHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」で夫婦役をやってたんだけど、この映画ではストーカー呼ばわりされてて(笑)」
小出「なかなか傷付きましたよ。つい昨日までイチャイチャしてたのに。ヒドいですよね(笑)」
監督「役者ってすごいですよね(笑)。昨日まで夫婦だったのにストーカー呼ばわりされるっていう。あのシーンはやってて本当に面白かった。すげぇなこの関係って」
小出「アハハハ」
▷▷小出さんは恋人の長澤さんに叩かれるシーンもありましたよね?
小出「なかなか逞しいですよ彼女は(笑)」
監督「あの音は実際の音なんです。すっげぇいい音してた(笑)」
小出「でも2人の部屋のシーンは演じていて楽しかったですよ」
▷▷では最後に、これから作品を観る方にメッセージを!
小出「夢にまつわる物語です。前半はすごく楽しく笑える感じで進み、後半でグッと引き込まれていく構成になっている。すごくオイシイ映画だと思います!」
★『ボクたちの交換日記』3/23(土)→ミッドランドスクエアシネマほか

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