タイムワープ技術を駆使してあらゆる時代を調査・記録する機関「タイムスクープ社」の時空ジャーナリスト・沢嶋雄一を演じている俳優の要潤が、『劇場版 タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』公開前にキャンペーンで来名。
歴史に埋もれた名もなき人々を取材し、時代を考察していく姿を描いたNHKのドキュメンタリードラマ風歴史教養番組「タイムスクープハンター」の劇場版では、本能寺の変直後の京都にタイムワープした沢嶋が、織田信長の天下統一の拠点となりながらも、完成からわずか3年で焼失したとされる幻の名城・安土城の謎を解き明かしていく。
テレビからスクリーンへ変わったことで、スタッフ&キャストに何か変化はあったのか? 劇場版の撮影エピソードを振り返ってもらった。
『タイムスクープハンター』はライフワークになっています
▷▷テレビシリーズから長年、演じてきた沢嶋雄一はご自身にとってどんな存在ですか?
要潤(以下:要)「もう5年もやっているので、僕=沢嶋雄一という感じでイコール化してきましたね。俳優生活12年目に入るんですが、『タイムスクープハンター』は後半の半分携わっていることになりますから。もうライフワークといいますか、なくてはならない存在にはなっています」
▷▷映画版にあたっての役作りは?
要「今回の映画では客観性の目線があったので、今まで自分がどう演じていたのか振り返ってみたんですけど、沢嶋も成長しているし、僕自身も成長しているし、過去にこだわるのもおかしいなと思って。今の自分が等身大で演じることがいちばんリアルかなと。役作りをするとか、特別に何かを考えていたことはなかったです」
▷▷撮影で違いを感じることは?
要「映画版はストーリー展開がテレビシリーズとちょっと違って、客観性の目線になっていますし、時代を3つ渡り歩くので映画を撮っているなって実感はありました」
▷▷いつもと違う経験ができた?
要「映画を撮っている気持ちではいたんですけど、スタッフもテレビシリーズと一緒ですし、いつも通りグルーヴ感やリアリティを大切にするスタイルで撮っていたので、映画だからどうだということはなく。ただ安土城に行ったり、夏帆さんとコンビを組んだり、時任(三郎)さん、上島(竜兵)さん、嶋田(久作)さんに名もなき人々を演じてもらったので、そこでの気持ちの入れ様は違っていました」
▷▷歴史的な部分の見どころは?
要「歴史に詳しくないので、安土城がなぜ燃えたのかが謎になっていることすら知らなかったんですが、その謎が色々なカタチで解明されるので、そこが見どころかな」
▷▷ストーリーの中の事実とフィクションは?
要「織田信長が大切にしていた茶器があって、それが島井宗叱の持ち物だったこと、出てくる人物などは史実に基づいています。茶器が色々な時代を渡っちゃうのはフィクションです」
▷▷様々な時代を渡り歩く中で、ご自身や監督が特にこだわった部分は?
要「僕は監督に絶対なる信頼を寄せているので、僕自身のこだわりは無いに等しいんですが、監督のこだわりはたくさんありますよ。特に80年代は監督にとってリアルタイムだったので、当時着ていたのはセーラーズだったとか、ヤンキーの人が出てきたりとか、あの辺のこだわりは強かったですね」
▷▷特撮にも力が入っていましたね。
要「時を止めるフリーズガンというのが出てきて、時任さんと上島さんが撃たれて止まるんですが、監督は宙に浮いた状態で、逃げようとしている時にバンって撃たれたことを表現するために、入念にカットを重ねていましたから。出来上がりもすごくよかったので、注目していただきたいです」
不安そうだった時任さんもすごく楽しんで帰られました
▷▷新たなキャストとして参加した夏帆さんの印象は?
要「夏帆さんは普段“私サバサバしてんすよ”と言っているんですけど、すごく繊細な女優さんで細かいお芝居のことも気にしてて。でもこの作品って細かいお芝居は全然気にしないので(笑)。初日はそのギャップで悩んでましたけど、すぐに対応していましたね」
▷▷お笑い芸人の上島さん(ダチョウ倶楽部)もいい味を出していました。
要「上島さんはリハーサルをしなくてもちゃんと本番にテンションを持っていってくれるんです。普段は優しくて物静かな方で……あまり言うと営業妨害になっちゃいますけど(笑)。すごく紳士的で、テレビのイメージとはちょっと違いました」
▷▷ベテランの時任さん、嶋田さんはいかがでしたか?
要「時任さんとはその頃ドラマでも一緒だったんですが、撮影方法について“どういう方法で撮ってるの?”って興味津々にインタビューされました。ただ最初は自分にできるのか不安に思われていて。アクションもあまり経験がなかったそうで、難しいって仰っていたんですけど、実際に現場に入ってみたら、槍を付くシーンでここ(目の前)にカメラがあって、自分で自分を映すように槍を持っていったりする、そのノリがすごい楽しかったみたいで。“文化祭みたいで楽しいね”って、最後はすごく楽しんで帰られてました。嶋田さんは繊細な役者さんで、結構、細かいところまで役作りしてこられて。さすがだなと思う部分はたくさんありました」
▷▷監督の演出は?
要「監督は基本的にオールオッケーっていう人なので、厳しさは全然ないんです。各セクションみなさん好きなようにやりましょうって。もうみんな家族みたいになっているので、みんながやることに関してはまったく口を出しませんし」
▷▷セリフ回しについても?
要「監督の持論でいうと、喋り方は資料などで正確に残っているワケではないので、本当はどういう風に喋っていたかは誰も知らない。だから今の言葉で喋ってもらってかまわないということで。みんな自由に喋っています」
映画らしい映画なので劇場で観ると迫力があると思います
▷▷初めて参加される役者さんは撮影方法に戸惑うようですが、普通のドラマと比べてかなり違いますか?
要「違うと思います。照明もありませんし、音声もありませんし、ピンマイクをつけたり、バミリで立ち位置を決められて、ここでセリフを言ってくださいっていうのもない。実際にアナタがこの場所に入ったらどうしますか?という状態で撮影がスタートするんです。もちろん台本はありますけど、大まかな筋の中でセリフを足したり引いたり、アドリブを加えたり、自由にやってくださいっていう、ほぼドキュメンタリーに近いドラマみたいなスタイルなのですごく難しいと思います。でも役者としては新鮮なうちにセリフを言ってしまいたいし、集中力が長く続くわけじゃないので、発想力が出ている間に動きも思い付く限りをやってしまいたい。そういう意味でこの撮影方法は理に適っているし、いいグルーヴ感の中で始まって終われるんです」
▷▷臨場感を大切にしている故に大変だったことはありますか?
要「安土城の石段を駆け上がっていくシーンで、その年一番の台風が来てしまいまして。天候で撮影が中止になることってあまりないんですけど、初めて中止になるかもしれないっていうぐらい雨と風がすごかったんです。でも撮影を決行した結果、臨場感のある画(え)が撮れまして。そこがすごくタイムスクープハンターらしいといいますか(笑)。監督はよく神様が嫉妬しているから天候が悪くなると言うんですけど、それも逆手に取って撮影を進めてよかったなと思います」
▷▷でも台風の中で演じるのってかなり大変ですよね?
要「もうぐっちゃぐちゃでしたね(笑)。画で見るとキレイに写っているんですけど、実際はもっとすごいことになっていたんですよ」
▷▷撮影時間も短いと聞きましたが、今回は何日ぐらいで?
要「今回は13日間で撮りました。ぶっ通しではないですけど。本当は10日ぐらいで撮れると思いますよ」
▷▷大掛かりな映画を13日で撮影してしまうなんてすごいですね!?
要「テレビシリーズは全部ロケですが、1日半で1本撮っちゃうんです。基本的にテレビドラマでは、ロケで1日6分撮れたらいい方と言われているんですが、僕たちは30分で撮ってしまう。すごく画期的な撮影方法だと思います」
▷▷では最後に完成した映画をご覧になった感想と、これから観る方へのメッセージをお願いします!
要「タイムスクープ社の内部が描かれているのは今回の映画の醍醐味ですし、沢嶋の客観性の目線があるのも映画ならではなので、その辺りはテレビシリーズとはまた違った楽しみ方があると思います。個人的には本当に久しぶりに映画らしい映画を観たなというのが率直な感想ですね。今は日本映画でも本当の映画音楽って少ないと思うんですが、ちゃんとオーケストラを使って映画音楽を作っているので、劇場で観ていただくと迫力があると思います。最近では見たことのないような映画になったと思います」
★『劇場版 タイムスクープハンター』8/31(土)→ピカデリーほか ●HP ●インタビュー

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